Come back...?の魔力的な魅力と中毒性

私が、1日じゅう聴いていても飽きない曲があります。

それは、八乙女光作曲・作詞の『Come Back...?』です。

実際に、この曲を延々と4時間くらい聴いていたことがありますが、聴くたびに、違うところが印象に残ったり、新しいことに気づいて、いつまでたっても飽きない曲です。

アルバム『smart』が発売されてからもう3年ほど経ちますが、まだまだ私のCome Back...?熱は一向に冷める気配がないので、もう一生冷めないのではないかと思っているこの頃です。

 

 

今日は、私の一番好きな曲、Come Back...?についてとことん語っていきたいと思います。

 

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私が初めてこの曲を聴いたとき、まずイントロのピアノを聴いて

「ちょっと待って、これJUMPの曲?」

と確認してしまいました。今まで私が知っていたJUMPの曲とは全く違ったからです。

smart自体が、今までのかわいいJUMPとは違い、かっこいい面を一気に大放出したアルバムだったと思うのですが、その中でもCome Back...?は異色です。

 

シンプルなピアノの旋律から始まるイントロ。その1フレーズ後に、他の副旋律も入ってきて、だんだんとダイナミックになっていきます。そしてストリングスも入って、一気に濃密さが増したところに、あの一番印象的なメロディーラインが流れます(「鈍」「廃」「奇」「美」「乱」のメロディーです)

このメロディーは、光くんが何年も温めてきたものだ、とメイキングで言っていましたが、信じられないほど中毒性が高いフレーズです。

このメイン旋律に達するまでにわずか18秒、もうこの時点で私は心を鷲掴みにされていました。この曲は、このメロディーラインのアレンジで構成されているような曲ですが、このフレーズが流れるたびにどんどん引き込まれていく感覚です。ただの繰り返しではなく、たとえまったく同じメロディーであっても、全然色が違うんです。

 

聴きながら目を瞑ると、まるで得体のしれない、ものすごく広い宇宙のような空間が目の前に広がっていくかのような錯覚を覚えます。そして、あの「チャンチャンチャララン」のラインが流れるたびに、その宇宙に星が小さな爆発とともに増えていくんです。

 

そして、歌詞が出てきたとき、私は息が止まるような衝撃を受けました。

正直に言うと、最初はラップの歌詞だということもあり、なんて言っているのかははっきりはわかりませんでした。

でも、私にとって大きかった衝撃は「日本語でこんなに韻を踏むことが可能なんだ!」ということです。

聴きながら、あまりの心地よさに一種のエクスタシーを感じてしまったほどです。

衝撃と、ものすごい快感を感じながら、最初は歌詞カードを見ずに最後まで聴きました。

 

そのあと、一度歌詞カードを読んでみました。

でも、読むだけだと、いまいち意味がわからないのです。

あのメロディーに乗せてじゃないと、韻踏みや言葉遊び、また本当の歌詞の意味などは理解できない、この歌詞は、あのラップに乗せてこそ生きてくるのだ、と思いました。

もう一度、歌詞カードを見ながら2回目の「Come Back...?」です。

 

降りみ降らずみ行為が 恋をより混雑させる

 言葉の奥に潜むそのトラップ 言うべき想い

 焦る度 耽る間に 嫌な予感と勘 影へと逃げる前に

 湿気た紙に書き残す 『Goodbye』

 錆びついた鍵をまた 器用に昨日に戻すかのようにロック

 

この語彙力...!!ここまで韻を踏みつつ、歌詞の意味を複雑かつ深くしていく言葉を、光くんは一体どうやって見つけたんだろう、と不思議でなりません。

特に、「焦る度 耽る間に 嫌な予感と勘 影へと逃げる前に」の部分は、テンポとリズムが凄まじく良く、この部分だけでも延リピしてしまいたくなります。

この曲は普段の光くんが書く歌とは一味違う、ドロドロとした恋愛を描いているものですが、もうこの時点でドロドロ感がひしひしと感じられます。


夢にフラッシュバック 君の手がまた冷えた想いに迷いを生む
 Come back...? デタラメな台詞 冗談だろ? もう、溺れたくない


この一度目の「Come Back...?」は、彼女の裏切り?嘘?をいまだに信じられず、「嘘だよね?戻ってくるよね?」というような、戸惑いとかすかな望みを含んでいる「Come Back...?」に感じられます。

脳ある君は爪を隠すCat 胸を引っ掻くようなSmile
 You're a liar 何回巻き戻されてるのか... また君を愛してしまう

 『鈍』『廃』『奇』『美』『乱』  どうした? 君の散乱する愛
 You're a liar 後悔の理論 後退の意図 Come Back… 何が?


出ました、光くんの大っ嫌いな猫。

脳ある君は爪を隠すCat」って、どうやったらそんなフレーズを思いつくんでしょう?

ずるくて賢くて、「僕」を引っ掻いて傷つけてはまた爪を隠して甘える。

その度に傷つくけど、結局また愛してしまう。

自分が大嫌いな動物であるにも関わらず、実によく特徴を観察し、男性を翻弄する魔性の女性と合わせています。天才としかいいようがありません。

 

『鈍』『廃』『奇』『美』『乱』  どうした? 君の散乱する愛

 

どうやったらこんな韻踏みを思いつく?
語彙力が乏しい私はこれしか言えませんが、もう驚きでしかありません。

『鈍』『廃』『奇』『美』『乱』 の漢字5文字は、この曲が描く荒廃した不穏で狂気を感じる、かつ美しい世界を完璧に表現しており、この5文字を見るだけで不気味さを感じさせます。しかも完璧な韻を踏みつつ表現しているのです。しかも、この漢字は見た目のバランスも考えられて選んだのではないかと思うほど、見た目でこの曲の世界観を訴えかけてくるのです。

 

ここまでで、大嫌いな猫の特徴と、自分が苦手な女性像をうまくマッチングさせて描いてきましたが、天才八乙女光はここで止まりません。

2番の歌詞からは、男性側の反撃を描くのです。

 

It's gonna be my turn 君の答えは僕の想い掻き乱してるつもりかい?
 Wrong answer 秘匿崩壊 意もすでに正体さえも 分かっていた
 見飽きてる Show time 脳内の整頓はもう出来たかい?
 じゃあ...担壊の場で話そうか? よそうか? 予想は...
 You're a liar... Me too 錆びついた鍵はアンロック


猫のような女性に、ただただ翻弄されていたのかと思いきや、実はその意図も嘘でさえも、わかりつつ翻弄されているような振りをしていた...聴いた瞬間ぞっとしました。

実は女性は男性の手中にいたのだ、というような、サスペンス並みに鳥肌が立つどんでん返しが待っていました。

完璧に隠していた、「秘匿」にしていた彼女の嘘は、実はとうに男性に見抜かれ「崩壊」していたのです。しかも、「見飽きてる Show time」という歌詞を見ると、ばれていないと思って嘘をつき続けていた彼女を、その嘘がばれていないと思って男性を翻弄しているつもりでいた彼女を、冷めて呆れた感じで見ている男性が伺えます。

そして、すべてが覆されたあとに、男性が「じゃあ...担壊の場で話そうか?」と彼女に語りかけます。完全に形勢逆転です。「よそうか?」というのを見ると、彼女は相手が一枚上手だったことに動揺しているのでしょうか。

かと思いきや、次の「You're a liar... Me too」というフレーズに、本当は喧嘩したくない、争いたくない、嘘なんてつきたくない、という男性の意図が伺えます。

この、「Me too」という言葉には、いくつもの意味が含まれています。君に騙されている振りをしていた、という嘘と、ほんとうは喧嘩なんてしたくなくて今反撃している自分は嘘なんだ、という意味。

この男性が本当に求めているのは、争いではなく平和なんだ、と...

このような男性を描くところに、光くんの優しさ、性格が伺えます。


過去にフラッシュバック 君の目は冷えた心の傷に染みるだけ...
 Come Back...? デタラメな台詞 冗談だろ? もう溺れはしない

 脳ある僕は爪痕を残すCat 飼い慣らしていたのさ
 I'm a liar 何回巻き戻せてしまうのか また君を騙して笑う

 『鈍』『廃』『奇』『美』『乱』  どうした? 君の散乱する愛
 You're a liar 後悔の理論 後退の意図 Come Back...? 何が?

かと思いきや、一気に男性の冷たい面が出てきます。

冷えた心」「もう溺れはしない」「飼い慣らしていたのさ」「何回巻き戻せてしまうのか」「また君を騙して笑う
争いをしたくない、喧嘩をしたくない、という平和を願うのが男性の本心なのかと、前のフレーズで思わせられましたが、この歌詞を見ると、実はこの男性は、女性を騙して手の上で踊らせて、そんな風に翻弄されている女性を笑っているように思えます。

飼い慣らしていたのさ」「何回巻き戻せてしまうのか」「また君を騙して笑う

という歌詞に、女性よりもはるかにうわての、すこし狂気じみた男性の様子が見て取れます。

フラッシュバック」「冷えた」「能ある...Cat」「デタラメな台詞 冗談だろ?」と、1番と2番で共通している言葉も、意味がわかると全く違った意味に聞こえてきます。ここまで同じ言葉を使いつつ多様な意味を表現する光くん、すごすぎます。

 

最後に、またメロディーがイントロに戻るような感じで終わるのを聴くと、結局のところこの男性はまた最初と同じように、騙されている振りをしながら「翻弄」される日々に戻るのではないでしょうか。平和を好む光くんを考えると、このように考えるのが妥当に思えます。

 

 

 

ここまで豊かな言葉遊びを、このメロディーに乗せて、この音に乗せて曲を作り上げる八乙女光、一体何者。

 

しかし、驚きはここでは止まりませんでした。

smart魂のDVDが発売された時、私は何よりも先にCome Back...?を見ました。

そして、この曲を初めて聞いた時と同じくらい、痺れるほどの衝撃を受けたんです。

この曲は、ただ聞くだけでも、歌詞を見て聞くだけでも完成しない。

メロディーと歌詞とダンスと合わさって初めて、完全形態になるんだ、と思いました。

まさに、三位一体です。

 

イントロの、スモークの中メンバーが踊る姿は、とてもかっこよくて、この曲のミステリアスな感じがよく表現されていました。

なにより、光くんがセンターだということに(光くんの曲だから当たり前だけど)大興奮です。

一回目の「You're liar」の光くんの表情がもうこの上なくかっこよくて...

さらに2番に移る前に、光くんがフードをかぶった時には、もうさすがわかってる!と感心しきりでした。1番を歌っていた時とは一転して、違う人物になるのです。それを、フード1つで成し遂げてしまう光くん、天才。

フードを被ってラップを披露する光くんは、今まで私が知っている光くんとはまるで違って、不気味さと闇を感じました。

何より、振り付けがかっこよすぎます。

脳内の整頓はもうできたかい?」の部分の、頭を指差しながら回す部分が、ありえないほどかっこよくて中毒です。

そして、2回目の「You're liar」の時の光くんの手がたまりません。少し骨ばっている感じの光くんの手が、セクシーでたまりません。

そのあとの、「Come Back...? デタラメな台詞 冗談だろ? もう溺れはしない」のあとに、山田くんがニヤッとする部分。

ぞっとしました。全身に鳥肌です。

ちょうど照明の当たり具合で山田くんの顔に絶妙な影が降りていて、それが一層、不気味さと狂気を醸し出しています。また、この部分を美しすぎる山田くんが歌っているからこそ、そのぞっとするような完璧な美が不気味さ、恐怖、狂気に拍車をかけるのです。

 

 

 

 

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ここまで複雑でドロドロした、男性と女性が騙しあう恋愛の模様を、あのピュアで純真な風紀委員の光くんが書いたのかと思うと、未だに信じられない気持ちです。

この曲を書いていた時には、光くんにはなにか別人が乗り移っていたんではないかと思ってしまうほどです。

この曲は、歌詞、メロディー、振り付け、言葉選び、文字の配列、パート分け、ストーリーの全てにおいて計算し尽くされている、完璧な曲です。

 

「Come Back...?」は、曲中の女性と男性だけでなく、この曲を聴く私たちでさえも、曲を聴き、歌詞を見て、また聴いて、歌詞を見て、さらにダンスを見て、また曲を聴いて歌詞を見る...と翻弄し続けるのです。何度も繰り返し、「巻き戻して」しまいます。そして、私たちの心に「爪痕を残す」のです。

何度聴いても見ても、またCome Backしてしまう、そんな恐ろしく中毒性の高い曲を、八乙女光は作り上げたのです。

 

なんてものを作ってくれたんだ...!

 

でも、私は何度でも喜んで、Come Back...?の沼に溺れ、その中毒性に溺れます。

この翻弄される日々はいつ終わるのやら。一生終わらなくても、いいですけど...